イケナイ恋事情―私の罪と彼の罠―


「あと今日、YMタイヤの三田さんくるから。きたら俺に通して」
「分かったー」
「脚立、もういらないんだろ? 俺使うし持ってきたいんだけど」
「ああ、うん。もう使い終わったから大丈夫」

風間が脚立を肩に担いで整備室に消えていく。

やった。脚立、結構重たかったからラッキー。
風間の後ろ姿を見ながら、そんな事を思っていた私に、村田さんがパンフレットの包みを開けながら話しかけた。

「やっぱり風間さん、実莉先輩に優しいじゃないですか。
整備室にはアレより大きい脚立があるのにわざわざ持ってくれるなんて」

風間さんってちょっと強面だけど紳士ですよね、と言われて、素直に頷くべきか悩む。

確かに風間は意外と優しい。
気も利かないわけじゃないし、むしろ割と何でも気づいてくれるし、文句言いながらも色々と引き受けてもくれる。

口の悪さで全部がカバーされちゃってるからなかなか気づきにくいけど、でもいいヤツだ。

とは言え、普段がケンカ友達状態なため、それを素直に認めるのもなんだか悔しくて頷けずにいると、村田さんが抜き取ったパンフレットの包みを丸めながら言う。


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