イケナイ恋事情―私の罪と彼の罠―


「いえ。お世話になってるのは私の方ですから。
……でも、本当はもっと親密な関係になりたいんですけどね、風間さんのガードがきつくて実莉先輩に職場の先輩後輩って関係以上に近づけないんです」

何を思ったのか、急にそんな事を言い出した村田さんに驚く。
風間の名前を出すのはまぁいいとしても、こんな場所で自分の性癖カミングアウトしなくてもいいのにと。

それに、一緒に来てるそっちの子の前でそういう発言いいの?
そんな風に思ってハラハラしていた私なんてお構いなしに、村田さんがニコリと微笑みながら続ける。

その瞳は上辺だけで奥深くでは笑ってないけれど……鉄壁の営業スマイルを習得している村田さん相手じゃ、祥太には多分偽りの笑顔を見抜けないだろうから問題ない。
それでも、村田さんの憎悪がひしひしとぶつかってきて怖い。

「風間さん、実莉先輩にだけ態度違いますよね。よほど大事なんだろうなっていつも思ってるんですよ」
「え、風間が?」
「はい。それに、実莉先輩も……多分、風間さん相手だと安心するみたいですし。
この間そんなような事聞いたら、嘘ついてはぐらかされちゃいましたけど」

チラっとこちらに視線を向けた村田さんに、ぎくっと胸の中で音がする。
この間の嘘をまさか気づかれてるなんて思わなかっただけに、どう反応すればいいのか分からなくて……。

とりあえず、場を取り繕おうと、今日は別々に来たんだしそちらのお友達にも失礼だからと村田さんを席に戻して、私も祥太と向き合い直す。


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