義兄(あに)と悪魔と私
 
「ずっと言えなかったけど……私、好きなの。比呂くんのことが、好き」

閉じかけた瞼が、少しだけ開いた。
私は比呂くんの手を握る手に、力を込める。

「この先も、一緒にいたい。だから、待ってるよ……明日も、明後日も。比呂くんがどこにいても」

比呂くんの唇が、何かを言おうと動く。
私は聞き漏らさぬよう、耳を寄せた。

《嘘でも嬉しい》と、声にならない声は確かにそう言った。

「嘘じゃないよ……ばか」

私が言うと、比呂くんは再び口を動かした。

《笑って円》と、比呂くんがそう言ったから。
今がどんなに悲しくても、笑おう。

どんなに涙と鼻水でぐちゃぐちゃでブサイクでも、笑うよ。
私もあなたに、ずっと笑っていて欲しいから。

大丈夫、悪魔の声は聞こえない。
もういないよ。この世界のどこにも。





だから、比呂くん。
私達は、もう自由なんだよ……






 
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