義兄(あに)と悪魔と私
 
家庭教師を口実に、俺は円を奴隷にした。
それでも、満足感は得られなかった。
彼女は決して、心までは屈服しなかったからだ。

幾度となく犯して、ひどく辱しめ、冷たい言葉で罵っても、彼女は折れなかった。

毎週木曜の夜以外、家では兄妹、学校ではただのクラスメイトを、完璧に演じきった。

いつしか、俺は何をしているのか分からなくなっていく。

俺の顔を見れば、憎まれ口ばかり叩く。
そんなことに苛立って。
何をやっている? 復讐なんだ、これは。

彼女を傷つける、それだけに意味がある。

良子さんの周辺を探らせていた探偵から、報告があったのは……そんな時だった。

良子さんの不倫相手は、実の兄。
そして、彼が円の本当の父親だと。

途方もない事実に、俺はしばらく何も考えられなかった。
そして、ようやくそこに思い至る。

円は、このことを知らない。
 
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