義兄(あに)と悪魔と私
 
「事故の直後、とてもリアルな夢を見たんだ。死にかけみたいな俺に、円が泣きながら《死なないで》って懇願すんの。それで、もう俺のことは許すとか、恨んでないとか……好きなの、とか」

俺が話す間、円の顔がどんどん赤くなっていく。
それを面白いと思うと同時に、どうしようもなく可愛いと思った。

「リアル過ぎて、現実かとも思ったんだけど……あんまり俺に都合が良すぎて、あり得ないよなって思って。
もし生きてもう一度会えたら、どっちなのか確かめたかったんだ」

この時点で、顔から火を吹きそうなくらい赤面している円からは、答えを聞かずとも明らかなように思えたけれど。

「だから、ねぇ円……どっち? 夢かな、現実かな?」
「そ……その手には乗らないから!」

もう一度、あの再現をという俺の思惑は外れ……外された。
意地っ張りで頑固で、思い通りには動いてくれない。その方が円らしいといえば、らしい。
 
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