義兄(あに)と悪魔と私
 
「お疲れさま。勉強は捗ってる?」

途中、母が夜食を持って様子を見に来た。

「かなり進んだよ。円、飲み込みが速いし」

とびきりの営業スマイルで答えた比呂くんに驚いて、思わず彼を二度見した。
先程まで、私が問題を間違える度、バカだのアホだの言っていたのはどこのどいつだったか。

「あら、そう? じゃあ後は二人に任せるけど……キリのいいところで終わりにしなさいね。明日も学校なんだから」

母が部屋を出て、階段を下りて行く音を確認すると、比呂くんは大きく息を吐いた。

「……疲れた」
「猫かぶりが?」

私の嫌みにも、比呂くんは動じない。
どこまでも完璧で、隙のない男。

「言うねー。この間は、あんなに震えてたのに」
「……っ、うるさい!」
 
< 38 / 228 >

この作品をシェア

pagetop