義兄(あに)と悪魔と私
「お疲れさま。勉強は捗ってる?」
途中、母が夜食を持って様子を見に来た。
「かなり進んだよ。円、飲み込みが速いし」
とびきりの営業スマイルで答えた比呂くんに驚いて、思わず彼を二度見した。
先程まで、私が問題を間違える度、バカだのアホだの言っていたのはどこのどいつだったか。
「あら、そう? じゃあ後は二人に任せるけど……キリのいいところで終わりにしなさいね。明日も学校なんだから」
母が部屋を出て、階段を下りて行く音を確認すると、比呂くんは大きく息を吐いた。
「……疲れた」
「猫かぶりが?」
私の嫌みにも、比呂くんは動じない。
どこまでも完璧で、隙のない男。
「言うねー。この間は、あんなに震えてたのに」
「……っ、うるさい!」