義兄(あに)と悪魔と私
 
修学旅行一日目、午前の予定は全員で世界遺産に登録されているお寺の見学。その後皆で昼食をとり、午後からは班ごと分かれてにルート散策の予定だった。

ルート散策は、あらかじめ用意されたいくつかの散策ルートを班ごとに選択し、それに沿って行動しながら京都の文化を学ぶというもの。

私達の班は、京都市内を路線バスで移動しながら、京都にある世界遺産や文化財をひたすら見て回るコースを選んでいた。

そして一日目昼食後、お手洗いを済ませ、集合場所であるレストラン裏の公園で、同じ班の麻実を探す。

「円、こっちだよ」

背後で声がして振り返ると、丁度麻実が私を手招きしている。
傍らには同じクラスの男子―― 瀬戸くん。
麻実と瀬戸くんと私、これに比呂くんを加えたのが班のメンバーだ。

「あとは有坂くんだけだね」

麻実が言う。比呂くんはまだ集合場所に来ていなかった。

「比呂の奴、遅いな。北見……何か知ってる?」
「……分かんない」

瀬戸くんに問われて、私は答える。
しかし、比呂くんが遅れている理由を本当は知っていた。
 
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