義兄(あに)と悪魔と私
 
(片想い……好きな子)

ベッドに入ってからも、麻実の言葉が何度も繰り返し再生される。

何を考えているんだろう。
比呂くんを好きなのだと自覚したところで、私には何の望みもない。

私が彼を憎むように、彼も私を憎んでいる。
奴隷が恋人になることなど不可能。

そう思ったら、何故だか涙が込み上げてきて、隣で寝ている麻実に気づかれぬよう懸命に声を殺した。

私だって、こんなことを望んでいたんじゃない。
あんな悪魔を好きになるなんてありえない。
今でも理性ではそう思っている。

それなのに、理性と解離していくこの心を止めることはできなかった。

きっとこれは一時の気の迷い。
夢から覚めたら、全て元に戻っている。

それだけを祈りながら、私は眠りに落ちた。
 
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