君影草~夜香花閑話~
---忍びだな---

 扱う武器が手裏剣なところといい、単なる見張りの兵ではなさそうだ。
 足音は一つだが、侮れない。

 この屋敷にいる忍びは、十勇士かもしれないのだ。
 下手にやり合っては、こちらの身が危うい。
 片手で敵う相手ではないことぐらい、真砂だってわかっている。

---とにかく、出来るだけ逃げに徹して……---

 十勇士は強敵だが、真砂だって忍びとしては並ぶ者のないほどの腕前だ。
 先程攻撃を仕掛けてきた忍びは、今は真砂の姿を見失っている。

 そのまま真砂は、その棟の端まで移動した。
 が、ここからは隠れたままでは無理だ。

---やはり、一旦は上に上がらないと駄目か。この壁を超えないと、向こうの棟には行けないようだな---

 だったらまだ他の者に見つかっていないうちに、一気に行ってしまおう。
 ここから先は、強行突破だな、と腹を決め、真砂は振り返った。
 ようやく先程の忍びが、真砂を見つけて駆けてくる。

 敵は少ないほうがいい。
 いきなり真砂は反転して、その忍び目がけて地を蹴った。
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