君影草~夜香花閑話~
 羽月の報告に、真砂は渋い顔をした。
 あまりよろしくない状況のようだ。

「様子を見てきます」

 そう言って、羽月は入り組んだ梁や柱をすり抜けて、件(くだん)の部屋の真下に移動した。
 あそこまで入り込める者は、そういないだろう。
 小柄な羽月ならではだ。

 しばらく部屋の下でじっとしていた羽月だが、少し訝しそうな顔をし、そろそろと床板に手を当てた。
 そのまま、真砂を見る。

 真砂も少し近づき、しばし考えてから、小さく頷いた。
 それを受けて、羽月が部屋の隅に移動し、床板の一点を押し上げる。

 ぱらぱらと砂が落ち、羽月が中腰で中を窺った。
 辺りは、しん、と静まり返ったままだ。

「頭領」

 しばらくして、羽月が床板を戻して戻ってきた。

「変ですよ。人が倒れてます」

「何だと?」

「あきさんはわからないけど、千代姐さんが囚われていたのは間違いないです。倒れてる奴は、軒並み下半身剥き出しでした」

「死んでいるのか?」

「わかりません。でも、血の臭いはしませんでした」

 羽月の言葉を聞くなり、真砂は踵を返した。
 なるべく今の部屋の傍から、周りを窺う。
 そして、一気に縁の下から出ると、部屋に踏み込んだ。
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