君影草~夜香花閑話~
「……」

 ざっと中を見、すぐに庭に降りる。
 先に植え込みに身を隠していた羽月と捨吉の元に行き、真砂は屋敷を睨んだ。

「そうだな。確かに誰か、あそこに閉じ込められていた。だが戸が開いてたな。囚われていた奴が、男どもを倒して逃げたようだ」

「逃げた? でも、倒れてるだけで、あいつら死んでないんでしょう? あの二人だったら武器もない。しかも、三、四人いましたよ」

「確かにな。殺す目的だったら、あいつらだってそれぐらいの人数相手に出来るだろう。だが気絶させるだけ……。千代だな」

 真砂が呟き、植え込みの中を移動した。

「千代姐さんが、あそこに囚われてたってことですか? じゃあ、あきが主のところにいるってことでしょうか」

「そういうことになるな。しかし、千代も無茶しやがって……」

 忌々しそうに言いながら、真砂は屋敷の奥を目指した。
 大事なものを置いておくなら、執務室などのある奥屋敷だろう。

「と、頭領。どういうことです? 一体、千代姐さんは……」

 真砂の後を追いながら、捨吉が言う。
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