遅咲きの恋は花屋にて。




「怖いのよ…。初めてだから、こういう気持ち。」


春香は左手で持っていたグラスを、両手でしっかりと持ちなおした。その手にはギュッと力が籠っている。


「先輩、自分から告白したこととかもないんですか?」
「うん…てか人を好きになったことがあまり…というか、今までありませんでした。」
「先輩って本当勿体無いですよね、美人の無駄いです。」
「無駄って。」

伊藤は春香のツッコミを無視し、急に黙り込んで腕を組んだ。これは伊藤が新しい企画のアイデアを考える時によくする仕草だった。


「先輩!今日もう一度、その花屋さん行きましょう!」


そして、その仕草の後に出る言葉はいつも突拍子もないものだった。




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