遅咲きの恋は花屋にて。
episode2:花屋の男の子
桜の木は、もう若葉に衣装替えしていた。
オフィスから出てすぐに空を仰ぎ、深呼吸する。こうやってまだ夕日が出ている間に空を見ることができたのはいつぶりだろうか。
後輩の伊藤と同僚の松田と飲んで、早2週間が経っていた。花屋に寄ると宣言したものの、あれからも休む暇は無く、行かずじまいだった。
「…よしっ。」
いつも右に行く道を、今日は左に進む。こうやって仕事帰りに居酒屋以外の場所に行くのは、少し新鮮だった。
「あ、あったあった!」
春香は花屋の看板を見つけると、小走りで駆け寄った。
『Happy Garden』