ミステリー
悪魔は翻訳の通信講座の教材を見ると、
お腹を抱えて大笑いを始めた。


『は、は、はっ、は、は、はっは、
あーっはっはっはっ・・・

なんだ、朝飯前ってくらい簡単な初歩的な問題だぜ。


この程度の問題がわからないなんて、
そっちのほうがどうかしてるぜ、
めっちゃ簡単で、笑えるよ、
これなら、すぐに解けるし』


と、悪魔。


『あんた、いやみだなあ!』
一幸が不機嫌になる。


『なら俺が、一幸にレクチャーしてやるよ。
一幸、ようやく元気が出たようだな、安心だよ。』


それから一幸の部屋で。

悪魔が一幸に、翻訳の通信講座の教材の問題をすべて、解説してくれた。


悪魔の説明は非常にわかりやすく、
一幸は、疑問が一つずつ解消することがとても快感だった。


『一幸の訳は、内容は正しい部分が多いんだけど、意訳になりすぎてる時があるぜ、
翻訳する文の内容が理解できるのと同時に、
その内容をきちんと正確に伝えられるのが一流の翻訳だよ。
代金をもらって翻訳するんだから、
翻訳する文の内容を理解できて、その内容を正確に伝えることができる、
のが、当然だぜ。』


『そだね。
てか、悪魔くん翻訳経験あるの・・・・・??』


一幸の問いに


『ほんの少しかじった程度かな。
ひまつぶしの、お遊び程度にな。

んで、何かまだ、疑問な部分あるかい?』
と、悪魔。


『ううん、ないよ、もう、わかったんだ、ありがとう、
僕も、これからは、
どんどん自分で学ばないといけないな。』
と、一幸がほほ笑んだ。
初めての微笑みだった。


悪魔はなんだか安心した。


『ならいいぜ。

そうだ、腹すいてきたから、食べに行くか?』


『行こう。

そうそう、ママに連絡するね、
今日は友達とご飯食べに行くって。』

と、一幸が言い、スマートフォンを手に取るとメールを打ち始めた。


『お前の家族構成って、母さんと父さん?』


悪魔の問いに


『パパはずいぶん前、天国に行ったから、
ママと二人家族だよ』

と答える一幸。


『お前、大人なんだし、そのママって呼び方よせよ。
ママと呼んでいいのはせいぜい小学校低学年くらいまでだ。』
と、悪魔が言った。


『そ、そういわれればそうだね。』
と、一幸。
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