ミステリー
『そ、そうなんです。だから、不安で仕方ない、
教習所にくるの。


てか、あなたもここの教習生?』

女の子が小さな声で答える。

悪魔の端正さに、驚いてるのかもしれない。


『俺は、違うんだけどな。

てか、図星か。

まじに、誰かにつきまとわれてるのか。
かなり迷惑行為だよな、つきまとったりするの。
つきまとうやつは、単に自分をかわいがってるだけなんじゃないかと俺は思う。
俺も、つきまとうやつ、好きじゃない。


ここより、別の場所の方話しやすいかな。
今時間あるか?』


『ええ、30分くらいなら。
今日、早い時間の送迎バスで来たので。』
と、女の子。


『じゃ、あの喫茶店に行くか?
それとも別の場所の方、話しやすい?
あんたの好きな場所でいいぜ。』
悪魔が、かなり優しい声で聞く。


『あの喫茶店で、いいです。』
と、女の子。



悪魔と女の子は、教習所の向かいの喫茶店に入り、
窓際の席に着く。
今の時間は、あまりお客さんが入ってない。


ウェイターに、悪魔はアイスコーヒー、女の子は紅茶を頼んだ。


『あの、どうして私がつきまとわれてる事、見抜けたんです?
すごいですね。
あ、私、清香(さやか)です。』

清香が、さっきよりいくらか安心した顔で、悪魔に言った。



『清香の不安な顔を見れば
すぐわかるよ。

あの不安な顔は、自分につきまとう相手がそこにいないか、怯えないといけなくて、気が休まらないし不安が消えないし一瞬も安心できなくて、ずっとビクビクしてずっと怯えなきゃならなくて、不安で気が休まらない、
生きてる気がしない、今も監視されてるように感じる、そんな不安な顔だったし。』


悪魔が言い終わると、アイスコーヒーと紅茶が運ばれてきた。悪魔は自分の席の近くの、スティック型の砂糖とクリームを、清香に渡す。
『清香、砂糖とクリーム使うか?一つずつでいいか?』

清香は悪魔を見つめ、それから泣き出す。


『おいおい、大丈夫か清香?
無理もないわな、清香、大変だったもの。
無理ないか、つきまとわれるって大変だよな。』



悪魔が言い、清香に
ズボンのポケットから出したハンカチを出す。リラックマの可愛いハンカチだ。


『へえ、あなたリラックマ、好きなのね』
清香がいい、両目を拭く。
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