ミステリー
また、
別の日の帰りの会でも、朋子は泣いた。
朋子はその日の日直だった。

朋子のクラスでは、日直の人が日直の作業を何かし忘れたりすると(日誌を取りに行くのを忘れたり)次の日も日直をしないといけないルールがある。

朋子はその日、日直の作業をし忘れたのではないが、音楽の時間に
音楽の喪黒福美先生
(もぐろふくみ、ていうフルネームから、
児童には、もぐもぐちゃん、もぐちゃん、
もぐりん、くろちゃん、ふくちゃん、
フックー、モッチー、福の神、
海賊フック、フック船長様、
パンツェッタグローラモ、
モグロシスコザビエルなどと呼ばれる。
ちゃんと喪黒先生と呼ぶのは朋子ふくめても
数える程度しかいない。
他の先生が、ちゃんとした呼び方しなさい
そういうあだ名で呼ぶのは無礼です、
としょっちゅう児童らをしかっている!)
に、軽く注意された。号令が少し小さいと。


帰りの会で朋子が、明日の日直を次の人にしていいかクラスの人に聞くと(帰りの会で日直がそれをクラスのメンバーに聞くのが恒例)
その音楽の時注意されたことをクラスの1人が指摘したが、別段、日直の作業をやり忘れたのではないし別に日直やり直しの必要ないと
多くの人が言ったのだ。

が、朋子は帰りの会で泣き出した。

もしかしたら、クラスのメンバーには
泣いて誤魔化すずるいやつだと思われるだろうか??
幼稚園児よりガキなやつは
幼稚園に戻ってそこからやり直ししろや、と思われたかしら??
泣いて誤魔化すずるいやつに
みんなからみえたのかしら???
七瀬先生も、
泣いてるならいますぐ幼稚園に戻りなさい!
と言いたくなるのかしら??

自分がみっともなく情けなくて無念すぎた。


担任の七瀬藍先生が、職員会議終わり,
教室にその時にやってきて
朋子が泣いてるので、
何かあったの?ときくと
クラスの人が説明する。 
「ちょっと、いろいろありまして」
とクラスの一人。



七瀬藍先生は、
ミスしたんなら仕方ない、泣くな、と
まるで幼稚園児を相手に諭すかのように、
優しく諭すが、
クラスの人たちは、朋ちゃん音楽の先生に注意はされたものの、別に日直の作業をし忘れたわけではないから、明日の日直次の人にしていい、て、大半の人が言ってるんです、と
説明する。
七瀬藍先生は,おそらく別の理由だろう、
と考えた。
七瀬先生も、朋子がそんな
都合悪いのを誤魔化そうとするような
ずるい子ではないことくらい、
朋子はけして悪い子ではないことくらい
承知であった。
朋子も、あーあ、七瀬先生も、
厄介な児童の担任になってかわいそうだな、
幼稚園児よりもさらに
幼稚だとおもわれたろう、と我ながら、
感じていた。
意地悪しなくて優しい人が多いクラスなのになんで、泣いたんだろうなあと自分でも、我ながら感じていた。
(その日の昼休みに、阿部くん山崎くんに、廊下で、意地悪いこと言われたのがそもそもの原因であった。阿部くん山崎くんについては次ページ以降で記述あり)

また別の日も
朋子、みり、芽衣、涼子と、
芽衣の兄である蓮二(れんじ。芽衣の両親の昔好きだったアイドルから名付けたそうな)との五人で
芽衣の家で遊んだ時に、
ウノとトランプの後に
かくれんぼをしたのだが、
何回かめに
朋子が鬼になり、
朋子は蓮二の部屋の押入れを
開けようとしたが扉は全く開かなかった。
その押し入れには物がたくさん入ってて開きにくかったのだ。


ちなみにそのとき
みり、芽衣、涼子、蓮二は
その押し入れに隠れてたのだが
朋子はわざと押し入れのドアを抑えられてると勘違いして泣いてしまったのだ。

みり、芽衣、涼子、
蓮二は
朋子に、
押し入れに物がたくさん入ってたから
開きにくかっただけなんだよ、と
言った。


その日朋子が帰るとき、芽衣は
『あのさ、お願いだからさ、今日泣いたこと、
お父さんや、お母さんに言わないでね
、お願いだから。』
と言った。


(その日、朋子は用があり先に帰らないといけなかった。
また,別の日に,朋子と、芽衣、みり、涼子と別のクラスの菅原くんとで遊んでいた時も、
朋子は遊びの最中に些細なことで泣き
、芽衣が、両手を合わせ,
お願い言わないで,お願い言わないで、
お願い言わないで、お母さんやお父さんに泣いたことを言わないで,とたのんだ。
もし言われれば,
芽衣たちが先生とか両親に怒られかねない)


しかし朋子はその日
帰ると母親から
『あんた、またけんかしたんでしょう?』
と言われた。




その日の夜の藤咲家にて、
蓮二が芽衣に尋ねた。


『あの子なんでああなの??
少なくとも俺のクラスにあの子のような子はいないよ?』


芽衣も首をかしげ、答えた。

『私もわからないのよ、
どうしてあんなふうになっちゃったのかしら
ともちゃん。

でもともちゃん根はいい人なの、
それは確かなのよ。』


芽衣は、些細なことで
泣かれるのは困るものの、朋子は本当にいい人である、と知っている。

それを裏付けるエピソードとして、何週間か前、班に分かれての活動があり、
芽衣、朋子、2人の男子が同じ班になったのだが、
芽衣が小さなミスをした時2人の男子は
藤咲!何してんだ、このひどく取り込んでる時に、へますんなよな、困らすなよな、人を、
藤咲には協調性ってものがないのか!
と、かなりひどくきつい辛辣な言い方をした。

が、朋子はなにも何一つ文句言わず、ミスを直すのを手伝ってくれ、
誰でもミスくらいはあるよ、と言ってくれたし、
それを恩に着せることもなかった。

芽衣は、あの時朋ちゃんまでもが私を責めてたら、私も、もしかしたら少し、泣いたかもしれないわ、と一瞬思った。





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