ダイヤモンドの未来
患者さんに薬を渡し終え、戻ろうとする私の方へ、気になっていた男性が、向かってきた。

「おい。」

身体がびくっとした。

「いつ呼ばれるんだ?どれだけ待たせるんだ。」

明らかに怒った大きな声と口調。

「申し訳ありません。」

男の人の強い口調は怖い。とにかく、小さい声になってしまったが、頭を下げる。

やっぱり確認しておけばよかった。

本人に無理なら、会計にでも確認すればよかった…

今さら思っても手遅れなのは分かりきっている。

会計のスタッフも、何事かとこちらを見ているのが分かる。

「…お名前と受診した科を教えてもらえますか?」
恐る恐る尋ねる。

「整形外科で診てもらった酒井だ。」

「すみません。確認してきますので、椅子にかけてお待ち下さい。」

薬局の中にある、外来から回っくるはずのカルテボックスには、もちろん何も入っていない。

周囲にもカルテはない。

処方がある場合のカルテは、外来から薬局、会計へと回る流れになっている。外来に残ってしまっているのか、会計に回ってしまったのか…。
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