ダイヤモンドの未来
土曜日、平日に比べるとのんびりできるはずだった。

この病院は院外処方(病院の外の薬局に行って、薬をもらう)だが、特殊な薬や体調によっては院内処方になることがある。

その患者さんに対応するために、出勤している。

あとは、病棟からの急な変更などが土曜日の主な仕事。

薬局のカウンターで、外来患者さんに薬を渡し終えて、ふと顔を上げる。

あの人まだ待合いの椅子に座ってるんだなぁ…誰かが迎えに来るの待ってるのかな…

私が病棟から戻った時にはいたから、一時間はいる気がする。

60過ぎくらいの男性。足が悪いのか杖を持っている。見たことがある気はするが、常時、院内処方の患者さんかどうかまでは分からない。

受付、会計、薬局のカウンターは、続いている。受付と会計のカウンターの隅っこに薬局があるという感じ。その前にずらっと待合い用の椅子が並んでいて、男性は会計と薬局のカウンターの間くらい、後ろの方の椅子に座っていた。

あまりに、長く座っている患者さんには、
「何かお待ちですか?」
と声をかけることがある。
薬局の前に座っていて、女性なら声をかけていたかもしれない。けれど、椅子に寄りかかり、腕を組む雰囲気に尻込みしていた。

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