恋は盲目 Ⅲ 〜密やかな愛〜

グラスの縁を指でなで円を描き大輔を見

ていた。


すると声をかけてきた男。


「一緒に飲まない?」


ちらっと大輔を見るとあきらかに怒って

いる。

「…ごめんなさい」


「そんなこと言わないで、飲もうよ」


しつこいな…。


助けを求めようと大輔を見ると、その大

輔に客の女が声をかけている。


やっぱり、モテる男。


女慣れしている大輔は彼女をうまくあし

らう。


ほっとしていると横から声がする。


「大輔さん…ビールお願いします」


いつの間にか、目の前には女連れの飯島

さん⁈


「いらっしゃい…彼女もビールでいいの

?」


連れの女に確認するとカクテルがいいと

駄々をこね、大輔を困らせている。


飯島さんも自分が連れてきた彼女なら、

ちゃんと相手をしてあげればいいのに大

輔任せで頭にくる。


なんなのあいつ‼︎


それに、早希ちゃんとはどうなってるの

よ⁈


二股なんてしてたら許さないんだから…

…。


「大輔さん…首、どうしたんですか?」


自分の首を指さし位置を教える雅樹。


口に出さなくていいのに…。


「飼い始めたペットにやられたみたいだ

な」


(ブッー)


思わず吹き出した私に雅樹が気づいた。


「あれ…確か花村さんですよね?」


「こんばんは」


もう、やだな…。


この人の笑顔は嫌い。


感情がないもの。


それに、なにか気づいた顔だよね。

「マスター、ごちそうさま」


その場から逃げるようにわざとらしいけ

ど大輔と言わずにマスターと呼んだ。


それなのに…


「美鈴…うちのペットに早く帰るって伝

えておいて…」


「…………」


ありえない…何考えてるのよ。


首のキスマーク…私がつけたって言って

るようなものじゃない。


睨むと舌をベーっと出し(ふん)と顔をそ

むけ店を出た。


もう信じられない。


帰ってきたら文句言ってやる。


******************


「ただいま」

大輔が帰ってきた。

いつもなら玄関まで迎えに行くけど、今

日は出迎えてなんてあげない。

腰に手をおき仁王立ちで待ちかまえる。


つまらない言い合いでムッとする大輔。


怒っているのは私なのに…どうして言い

訳じみたこと言わないといけないのよ。


大輔の目つきが変わる。


あっ、大輔を傷つけてしまった。
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