鳴かない鳥
ほんの少しの勇気と


翌日の昼休み。


僕がした事は職員室へ行き、今井花の担任・吉田先生から話を聞く事だった。

学園祭での彼女の役割担当は何なのか、クラスメートたちの反応はどうなのか…その辺りの情報を仕入れ、教室に戻る途中の廊下で高村とバッタリ鉢合わせた。



「おっ、狭間みっけ!!」

「…はぁ?」

いきなり僕の手を掴むと、グイグイとどこかへ引っ張られて連れて行かれる。

「おい、高村…何だよ、どこに連れて行くつもりだ!?」

「どこにって、皆が待ってる教室にだよ」

それを聞いた瞬間、ピンときた僕は思い切り両足を踏ん張った。


「あ、トイレ…トイレ行きたい」


「嘘つけ。そんな事言って、お前逃げるつもりだろ」


苦しい言い訳などお見通しと、あいつはニヤリと笑う。

「今日は衣装合わせと段取りの説明するって、前から告知してあったの忘れてたとは言わせないぞ」

「…」

「他のやつらはもう着替えて、後はお前だけなんだ。女子が携帯用意して楽しみに待ってんだから、ほら行くぞ」


「け、携帯!?」


まさか執事の恥ずかしい格好を写真に撮るつもりなのか…。

冗談じゃないと、これ以上引きずられないよう窓の手すりに手を伸ばす。

「こら、抵抗すんな…狭間!!どうせ本番当日はもっと大勢の女子にキャーキャー言われながら、写真撮られるんだぞ」

「な、何がキャーキャーだよっ。言われる訳ないだろ!!」

「いいから大人しく来いよ」

高村は僕の手を無理やり開かせ、手すりから引き離した。

あぁ、まるで安っぽい芝居のワンシーン見たいだ。

騒いでいるのを聞きつけたよそのクラスの連中が、何事かと集まってくる。

もう勘弁してくれよ…。



結局、僕は抵抗を止めざるを得なくなり、いやいや教室に戻らされたのだった。


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