Closed~閉じてる彼ら~
「相良さん」


『うるさい。黙れ!』と叫びたかった。

声にならなかった。

代わりに、より強く打った。





天城くんは、何も言わなかった。





「縁!」


振り返ると、ささらが膝に手をついて、そこに居た。

ささらは息を乱していた。


「縁…」


『ささら』と、唇だけが動く。





ささらに抱き締められる。





「縁。ごめんね…。縁は…私の傍に居てくれたのにね」





渇いた笑い声。





少し見上げると、ささらは泣いていた。





笑い声が嗚咽に変わる。





水流、ささら。





天城くんは何も言わなかった。



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