天才に恋をした
シンジル気持ち
34-1
苗がまた小刻みに震えて出した。
「だけど…怖くなる。自分には出来ないって…怖い…」
言葉が出なかった。
俺には、苗を慰めるだけの人生がない。
『お前は天才だよ』って言ったところで、苗自身は信じない。
「孤独」って、こういうことを言うんだ。
自信がないのに、自分以外に頼る人間がいないんだ。
苗の頭を引き寄せた。
「俺も行く」
そう言った瞬間、自分の行く先がはっきりと見えた。
「俺も迎えに行く」
見える。
はっきりと見える。
「一緒に行こう」
苗が俺を見上げた。
「ダメ?」
と聞いてみた。
「ダメじゃないよ」
「ダメって言っても行くけどな」
「ううん。私、そうする」
腕の中で、苗の体から力が抜けるのを感じた。