天才に恋をした
「工藤、結城、南、…」



呼ばれた人間が、次々に返事をする。

監督の顔を祈るような思いで見つめる。



「靖国、斎藤、木下…」



いつもより、早いスピードで読み上げてる気がする。




「村瀬、一柳、角田…」

「オッス!!」



天に向かって声を張り上げた。



入った!




でも、レギュラーになれなかった奴がいる。

俺が諦めなかったことで、諦めないといけない奴がいる。



顔を引き締めた。


背筋に電流が走ったように感じた。



俺は今まで、分かってなかった。

レギュラーになるのが当たり前だったから。


みんな戦ってるんだってことが、分かってなかった。



手を握りしめて、周りを意識した。

自分が浮き上がって感じた。


自分のせいじゃない。

自分の力で、選ばれたんじゃない。


みんなが戦う力に、俺は押し上げてもらったんだ。


監督と目が合った。



すぐに逸らそうとした目が、また俺の元に戻った。



「サムライブルーだな」


監督の言葉に、みんなが顔を上げた。



監督は、それに構わず言った。

「工藤、始めろ」



陸玖が声を上げた。

「メニューA!始め!」


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