天才に恋をした
シジマの入り口
39-1
宮崎先生の朝は早い。
俺が朝練に出かける頃に、散歩から戻ってくる。
「真咲くん、おはようございます」
俺にまで深くお辞儀をする。
「おはようございます!」
慌てて頭を下げた俺が、上目使いで先生を見るとまだ頭を下げている。
な…長い。
ようやく頭を上げた先生が、音も立てずにドアから中へ入って行く。
すっげー。
さすが苗の親父。
俺なんか、年中母ちゃんに
「ドアは静かに閉めて!力まかせに閉めないでください!」
って怒られるのに。
苗もあの世界にいるのかな。
でも苗は、泣くし、動揺する。
だから、あの世界の入り口にいるんだろう。
その入り口って、どこにあるんだろう。
俺にはまだ見つからない。