天才に恋をした
宮崎先生と遺体安置所で対面した。

うっすらと口を開けて、目は閉じていたけど、

ちょっと驚いたような顔だった。


相談の結果、日本で火葬することにした。

土葬が主流のヨーロッパでは、火葬場があまりない。



リーグブルからも人が来たし、

教鞭を取っていた大学からも、

沢山の人が弔問に来た。




日本からマスコミも来て、

俺や苗にマイクを向けようとしたが、

どこの関係で動いているのか、

厳重な警護がついた。



リーグブルで準国葬が行われた。



苗は出席できないほどやつれて、

セレモニーの間は、

家でシュエに付いていてもらった。



すごい人波だった。

老人が拝むように手を合わせ、

先生の乗った車に頭を下げた。


小さな子供はブーケを手に、

母親に言われるがまま、

それを沿道へ投げ入れた。



見たことのある要人たちが沢山いた。

皇室からも。



試験がある俺と苗は、帰国できない。

母ちゃんが帰ることになった。


空港で無言の帰国を見送った。


ふらふらの苗を支えて、

労りの言葉に答えた。


「偉大な人だった」

「僕もそう思います」

「彼の意思を継ぐのは我々だ。試験が待っているね。幸運を祈る」

「ありがとうございます、大統領」


< 247 / 276 >

この作品をシェア

pagetop