天才に恋をした

43-2

シュエを家族に送り届けた後、家には帰らないで春一のディベートを観戦することにした。


モニターするのは自由だ。


残念ながら、負けた…

だけど、接戦だったと思う。



後で言ってやらなきゃな。


あ~あ。

改めて俺は運が良かった……




部屋を出ると、別の部屋に乃愛が入って行くのが見えた。



ふーん。


イギリスで、何を学んだか見てやろう。

部屋に入ると、すでにテーマが発表されていた。


「特権階級の必要性」


すぐにスピーチを仕上げだしたが、まったく話し合う気がなさそうだ。

ペアになった子に注意されている。

乃愛が言い訳しているのが聴こえた。



「その方が効率的だと思ったの」

「効率的ではなく、建設的を目指したいわ」

「構わないけど、こんな短時間で建設的だなんて」


は?

それがディベートなんだよ。


まさか、ディベート素人?



案の定、フランス人らしき相手チームに皇室のことをつっこまれ、

それに対してロクな反論もできない。


アイツが日本人であることが恥ずかしいよ……。

英語のレベルも高校時代と変わってないし。



部屋全体が、だらけてる。


当然、負けた。


「時間の無駄でした」

と、ジャッジマンが言った。


女の子が、ヒステリックに泣き出した。

乃愛は唇をブルブルさせて、それでもツンとアゴを上げて足早に出ていった。


相手側は握手しようと待ってたのに、苦笑しながら肩をすくめた。



「茶番…」


日本語しゃべるの久しぶりだ。

もう苗とも思いっきり日本語でしゃべれる。


よし!帰るぞ!

つーか、帰国する!
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