天才に恋をした

9-2

ホィッスル音と同時に、みんな飛び上がった。

「角田~!あそこよくしのげたなあ!」

「陸玖もすげぇ!よくアレ見えてたよ!」




準々決勝を突破した瞬間だった。

それだけじゃない。

対戦相手の高校は、優勝候補だった。




「カッコイイー!」

「マジすごかったッスよ!」




みんな口々に言う。


俺もその輪に加わりながら、顔だけで興奮を作っていた。

後ろから、対戦相手のかすれた声が聞こえた。



「俺が…ごめん」

「違う。泣くな」

「ごめん…」



結局…

うちの高校は決勝戦までを勝ち進んだけど、去年の優勝高校に負けた。



「来年は、絶対優勝しろよ」

先輩たちは泣きながら言った。

陸玖は真っ直ぐ前を向き、角田は泣きながら、野太い声で返事をした。


俺は黙って、頭を下げたままでいた。
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