天才に恋をした

17-3

苗の部屋をノックする。


…なんの反応もない。


もう一度、強くノックする。

今度は急にドアが開いた。


「苗…」



『女っぽくなった』

正月に誰かが言ってたな。


何が変わったんだろう。


メガネのフレームが華奢になって、

苗のゆるやかな頬のラインが目立つ。


きちんとカットされた髪は、

クシャクシャなようでリズムがあった。




悔しい。




「変わるなよ」


苗は意味が分からない様子で、俺を見上げた。



「お前は、何でそんなに変わろうとするの?」



苗は目をパチパチさせて、俺を見ている。


「…かわ…る?」

「何でそんなに頑張ってんの?」

「…頑張って?」



俺はうなずいて続きを待った。
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