Sugar&Milk
「何言ってんの……多分あの子も学生だよ?」
「橘にだけは文句言われたくないね。俺は成人してれば問題なし」
本気で紹介してほしそうな声音にまたも呆れる。ノリの軽い山本は私が知る限り女性との交際が長く続いたことがない。
成人してれば問題なし、か……。そうだよね。大学生と付き合ってもいいんだよね。でも私が大学生の時は社会人と付き合おうとすら思わなかったけど。瑛太くんから見たら、私ってすごく大人に見えるのかな……。
「山本っていつもそんなこと考えてるの?」
「山本くんは仕事以外はいつも女性のことしか考えてないよ」
武藤くんと冷たい視線を向けると山本はむすっとする。
「お前ら俺の本気を知らないだろ」
「山本って仕事以外で本気になるの?」
「なるよ。まぁ見てろって」
そう言うと山本は先ほどの女の子を見ながらホットサンドを口に入れた。
「中山くん違うよー」
カウンターからあの女の子の声が聞こえてきた。
「だから牛乳は200ミリだろ?」
「そうじゃなくて、こっちの牛乳から使うんだったら、賞味期限はこのパックに合わせて書くんだって」
「うっそ、アイスティーのじゃなくて?」
「うん、こっちの牛乳だから」
私はカウンターを盗み見た。瑛太くんとあの女の子が奥の作業台で何かを作っていた。楽しそうに、笑顔で。
女の子が時々瑛太くんの顔を見つめる。その目は恋する女の子の目だった。私に向けた冷たいものとは明らかに違う、瑛太くんを想う目だ。
瑛太くんもいつも見ていた仕事中の顔とは違っている。緊張感を持って働いている中で、気を許せる仲間に向ける油断した顔。私に見せる顔とも違う、初めて見る顔だった。
「あははは」
女の子の笑い声が聞こえる。客席にまで聞こえてくる声は、よく通るはっきりとした声質だ。私はその声にどうしようもなくイライラした。