Sugar&Milk

私が知る前からの瑛太くんを彼女は知っている。私といるときとはまた違う瑛太くんの姿を見られるあの子が羨ましかった。学生に嫉妬するなんて子供なのはどっちだろう。自分が嫌になる。

食事を終えるとトレーを下げ口に置いた。すると「恐れ入ります」と瑛太くんの声が聞こえた。

「恐れ入ります」

女の子が瑛太くんの声に続いて同じ言葉を繰り返す。そしてまた目が笑っていないわざとらしい笑顔を私に向けた。

「ごちそうさまでした」

「ごちそうさまー」

山本は女の子に笑顔で言った。

「ありがとうございました」

店を出る直前に瑛太くんを見ると、変わらず手を振ってくれた。その唇は声に出さず「またね」と言っていた。



◇◇◇◇◇



山本と組んで大型プロジェクトを担当するようになってから残業が増え、今日も会社を出たのが21時過ぎだった。
私に時間ができても瑛太くんとは会えない。時間を作ってデートできたのは瑛太くんの誕生日だけ。その記念日を思い出しては一人ニヤける。
駅まで歩きながら右手の薬指に嵌めたお揃いの指輪に左手で触れる。

初めて瑛太くんの家に行って体を重ねた。セックスは初めてじゃない。でも久しぶりだからこそ肌の感触や快感に溺れてしまった。相手は年下の大学生。もう恋なんてしないと思った数年前の私がこのことを知ったら腰を抜かしたかもしれない。
それに今の私が大学生と付き合っていると知ったら元カレはきっと笑うだろう。自分の時間を優先するために別れたのに、会う時間がなくて寂しいと感じる立場が違う相手なのだから。
だからこそ瑛太くんとの付き合いは慎重にしたい。本当は毎日でも会いたい。でも彼の生活を縛りたくはない。まだ大学生だ。学業もアルバイトも、今しかない彼の時間を私に割かせるわけにはいかない。

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