Sugar&Milk
駅の階段を上がると無意識に瑛太くんのカフェを見てしまう。今日はバイトが休みだとは聞いていたけれど、今では必ず店内を見てしまう癖がついていた。
店の前に置いてあるクリスマスツリーを店員の女の子が店内へ入れようとしていた。
もうそんな季節か……。クリスマスは瑛太くんと過ごせたらいいな。
歩きながら何気なく店員の顔を見ると、先日怖い印象を抱いた女の子だった。また冷たい目を向けられたくなくて急いで改札を抜けようとすると、女の子が動かしているクリスマスツリーからキラキラと輝くボール飾りが落ちて転がった。私の足元にまで転がってきた飾りを拾うと、渋々女の子の元へ足を向ける。
「あの……」
声をかけると女の子は私を見た。そうして驚いた顔をする。
「これが落ちましたよ」
「ああ……ありがとうございます」
女の子は表情を変えず私から飾りを受け取った。
そういえば山本が未成年かどうかを気にしていたんだった。瑛太くんにこの子の年齢を聞くのをずっと忘れていた。まあいいか。山本に目を付けられるこの子も可哀想だし。
女の子は閉店作業に戻ったようでツリーを抱えて店の中に入っていった。私は女の子がいなくなったことで自然と溜め息が出て下を向く。無意識に緊張していたようだ。
顔を上げると店のガラスの壁に描かれたクリスマスの絵が目に入る。スプレーで描かれたらしきサンタクロースの体の線は、泡のように立体的でフワフワとしているが風が吹いても落ちそうになかった。ついつい触りたくなる。
このスプレーどこで売っているんだろう。今度のイベントで使えそう。メーカー知りたいかも。
仕事のことを考えてしまいじっと絵を見ていると、先程の女の子が私の横に立った。
「あの、今日は中山くん休みです」
「え?」
女の子から突然瑛太くんの名前を出されて面食らう。
「中山くんは今日お店にいませんよ」