Sugar&Milk

相沢に聞こえないよう溜め息をついた。

クリスマスだけはどうしても会いたい。無理を言ってでも店長に休みたいってお願いしてみようか。彼女と初めて過ごすクリスマスなのだから。

過去の彼女とはクリスマスを一緒に過ごした経験はなかった。それどころか彼女はクリスマスを前にして浮気をしていた。よりによって俺の親しい人と。
何がいけなかったのだろう。気持ちを言葉にしてこなかったから? 体の相性が悪かった? あっちから告白してきてくれたのに裏切るなんて、それならどうして俺を好きだと言ったのだ。

嫌なことを思い出してまだ営業しているのに集中力が切れてしまった。
クリスマス前は気持ちが落ち込む。こんなときは朱里さんにそばに居てほしい。甘えさせてくれて、甘えてくれる彼女に離れられたらトラウマが確定してしまう。
会社員の年末がどれほど大変か今の俺には分からないけれど、同期の山本さんに嫉妬しているなんて知られたくないし、負担をかけたくない。愛想をつかされることが一番怖い。やっぱり子供だって思われたくないんだ。

だけどいつまで? 朱里さんの周りにいる男に嫉妬しなくてもいいくらい自分に自信がつくのは一体いつだ? 俺も就職して稼げるようになるまで?
それまでに朱里さんはどんどん先に行ってしまう。彼女はもう社会での立場を築いている。
俺とのこと、どこまで考えているんだろう。離れることなんて考えられない。ずっと朱里さんと一緒にいたい。俺が就職して朱里さんを支えられるようになるまで何年かかるか分からない。
実感の湧かない『結婚』という言葉が頭をよぎる。
彼女は俺を待ってくれるだろうか……。










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