Sugar&Milk
「ストーカー」
「は?」
「この間から話しかけられて困ってるの。しつこくて……」
「あの人って前からよく来てたっけ?」
「ここ最近、週に何回かだけど。中山くんが休みの時にも来たよ」
「そうなんだ……」
「超チャラいよあの人」
そういえば以前相沢が山本さんをチャラそうと言っていたのを思い出す。
「好かれてるってことじゃん?」
「迷惑だし」
はっきり言い放つ相沢には思わず笑ってしまう。
「あんな男御免だし!」
自分が朱里さんに声をかけたのも、似たような感じだったよな。もしかして俺も最初は朱里さんにウザがられてたのかも……。
俺は山本さんをフォローすることを何も言えなかった。もし相沢と山本さんが親しくなれば俺の過去の痛いアプローチも肯定される気がして「そういえば相沢は彼氏いないの?」と聞いた。いないのであれば山本さんに分があるかと思ったのに、この質問は地雷だったのか相沢の眉間にしわが寄った。
「もう一年近くいないよ」
「そっかー……」
失敗した。話題を変えるにしてももっと違うことを言えばよかったのに。
「そろそろ新しい彼氏ほしい」
「好きなやつはいないの?」
「いるけど彼女がいる」
相沢は無表情で冷蔵庫から廃棄する食材を出すと乱暴にゴミ箱に投げ捨てた。
「だから別れるの待ち」
ボソッと吐いた言葉に「怖いよ。その呟く感じが」と返す。
「あはは、ごめん」
口元は笑っているけれど目は笑っていない気がした。
「中山くん年末は実家に帰るの?」
「いや、年明けに帰るよ」
「そうなの? もしかして、年明けの瞬間まで彼女さんと過ごすとか?」
「まあね」
「ラブラブだねー、羨ましい……」
棒読みの『羨ましい』に朱里さん中心の生活を呆れられているのだと感じた。