Sugar&Milk
「朱里さん、もしかして寝るとこだった?」
そういえば部屋着のワンピースを着ていた。部屋を片付けることを意識していて着替えることを失念していた。
「今日はもう瑛太くんと会えないと思ったから……」
「ごめんなさい」
玄関に入ってきた瑛太くんは片腕で私を優しく抱き締めた。
「会いたかったぁ……」
疲れていそうな声に私も両腕を瑛太くんの腰に回した。
「お疲れ様」
「うん。朱里さんは仕事だった?」
「今日こそは定時で帰れって強引に会社から追い出されたから、残業はなかったよ」
「……誰に追い出されたんです?」
「山本っていう同期。何回かカフェに行ってるでしょ?」
「…………」
私の言葉に瑛太くんは黙ってしまった。
「瑛太くん?」
不思議に思って顔を覗き込もうとすると首筋にキスをされた。
「ちょっと……」
くすぐったくて体をよじると逃がさないようにか腰を強く引き寄せられる。
「逃げないで……」
「だめだって……ここ玄関だよ……」
「じゃあベッドならいいの?」
耳元で意地悪く囁かれた。恥ずかしさと僅かな罪悪感で返事ができない。前回会ったときにお泊りを拒否してしまった。会う度に体を重ねることに少しずつ疲れが出てきていたから。
「泊まっていってもいい?」
不安交じりに聞いてきたのが分かったから私は小さく頷いた。
部屋に入れると瑛太くんは中央に置かれたローテーブルにケーキの箱を置いた。
「残り物で申し訳ないけど、うちの店のケーキ持ってきたよ」
「ありがとう!」
クリスマス関係の仕事はしたけれどクリスマスらしいことは自分では何一つしていなかったから、ケーキを食べられるのが嬉しくて口元が緩む。