Sugar&Milk

「バイト終わったの? お疲れ様」

「今終わって歩いてるよ。朱里さんは?」

「私はもう家だよ。ごめんね電話に出れなくて。お風呂に入ってたんだ」

「ならよかった。朱里さんのマンションって、コンビニの隣の隣でいいんだよね?」

「えっ? え!?」

「今そこのコンビニを過ぎたところ」

「まさか、下にいるの?」

「うん。マンションの下に着きました」

突然の事態に慌てる。今夜は会えないと思っていたのにすぐそばにいるなんて。
部屋から出てマンションの通路から下を見ると入り口に立っている瑛太くんが私を見上げている。私の部屋は3階だから夜でも嬉しそうな顔がよく見える。手には何かの箱を持っている。

「ごめんね、来ちゃった」

耳に当てたスマートフォンから聞こえる声に嬉しさと焦りが同時に湧き上がる。

「朱里さんが嫌じゃなければ、上がっていい?」

どうしよう、部屋片付いていたっけ?
家の近くまで送ってもらったことはあるけれど中に入れたことはない。予定にない訪問でパニックになる。この状況では招き入れなければ嫌な思いをさせてしまうだろう。

「片づけてないけど……どうぞ」

「ありがとう!」

嬉しそうな声を出して通話を切ったのと同時に瑛太くんはマンションのエントランスに入った。私は急いで部屋に戻ると粘着クリーナーを床に大雑把に転がす。部屋中見まわして変なものがないかを確認するとチャイムが鳴った。玄関ドアを開けると満面の笑みの瑛太くんがドアを全開にした。

「遅くにごめんね」

「ううん、大丈夫だよ」

よっぽど急いで来てくれたのか少し息が上がっている。じっと私を見つめるから「な、何? どうかした?」と自分の全身を見回す。

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