光のナイフ
平川美玲(中学2年生)
夏休みも終わり、始業式が始まってもうひと月近く経つというのにまだ夏の面影は残っている。
時折肌寒い朝や夜はあれども、日中は気温が高く、むしばむような暑さに制服がじわりと濡れる。
空調のないこの田舎の小さな中学校。
二年生の校舎の入り口から一番端の教室。2年4組の教室の窓際の席で、平川美玲はため息をついた。

暑いのって本当に苦手。

彼女は空を見る。
空だけは秋の雲を呼んでいた。夏の大きくて分厚い雲とは違い、薄くて、指でつまむとそのまま溶けて消えてしまいそうな優しげな雲。
そんな秋空を見ていると、心なしか暑さも和らぐような気持ちだった。
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