ハイカロリーラヴァーズ
 不機嫌になっただろうか。隣に座った青司の顔色が気になる。カウンターに並んで座っていたんじゃ、それが分からない。源也の顔色をうかがって暮らしているせいで、こんな時は青司の顔色も気になってしまう。

 うん。あまり深く立ち入ってはいけない。あたし達は恋人同士ではないんだから。分かってる。青司がこの先どうしようと、あたしは……関係無いんだ。

「それより。用事あるって言ったじゃん」

 これこれ、そう言いながら封筒を取り出してあたしに差し出す。そうだ。なんか用事あるとか言ってたっけ。

 茶封筒を開けると、横長で水色のチケットが入っていた。「invitation」と書いてある。

「なに、これ?」

 今週末の日付とオープン18:00、スタート18:30の印字。チケットだ。

「ライブ。来てよ」

「……ライブ?」

 これのミーティングだったらしい。
 バンドの名前が3つ、ライブハウスの名前。「D代500円」って書いてある。ライブハウスは大抵1ドリンク制だから。

「そ。招待。パス回せば入れるんだけど、今回ちょっと大きなイベントでインビテが出て、だから……」

「ちょっと」

 ひとりで話を進めていく青司。

「ねね、だから、来てよ」

 用事って、これだったのか。まだ行くって言っていないのに。

「3マンで、俺らトリなんだ。主催がうちのバンドだから」

「主催なの?」

「そ。ねーだからぁ。来てよ」

 来てよって猫なで声で言わないで欲しい。今までこんなの誘ったこと無いのに。なんでまた。


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