ハイカロリーラヴァーズ
「……どうして?」

「なにが」

「ライブ、誘ってくれるなんて」

「来て欲しいから。俺が、何やってるのか、見て欲しいから」

 グラスを持った手、右手中指にシルバーのリングがはめてある。左はコードを押さえるから邪魔になるとかなんとか……そんなことを言っていた様な気がする。

「浪人してるくせにバンドなんかやってって、思ってるんだろ? まぁそれは置いといて1回来てみてよ」

「……うーん」

 2杯目のビールが半分くらいになっていて、それをぐっと飲み干した。なにか予定があるわけじゃなかった。なんだか、不思議な感覚。ライブに来てなんて、誘われると思ってなかった。関係無いと思っていた。

「いいの?」

「なにがだよ。俺が誘ってんのに」

「そっか」

「用事あんの? 彼氏?」

 なんとなく、ふたりの会話が噛み合ってないような、ちぐはぐな感じが、なんだかこそばゆい。馬鹿か、あたしは。

「何も無いよ。分かった。ありがとう。行く」

「やったね」

 生ハムくださーい。青司の声。ここの店長らしき人と少し言葉を交わしてる。あたしは箸で、先に頼んであった冷や奴をつまんだ。

「バンド、なんていうか……何やってるの? どういう感じ、ジャンルとか」

「ああ、えーと。まぁロック……」

 青司は頭を掻いた。少し恥ずかしそうに。なんかその気持ち分かる。心の中で笑ったあたしの顔はきっと青司と同じ表情だったに違いない。

「あらためて聞かれると、なんだか気恥ずかしいんだけど」

「ああ、ロックという型にとらわれず、俺たちがジャンルだっていうことね」

「やめろぉ」

 カウンターに突っ伏した。きっとMCなんかでそう言ってるに違いない。馬鹿にしているわけじゃない。

< 34 / 139 >

この作品をシェア

pagetop