ハイカロリーラヴァーズ

「いいじゃん、そういう気持ちって大事だよ」

「そうかな。そうだよな」

「そうそう」

 青司はパアッと笑顔になった。その笑顔を見て短いため息と笑いが出てしまった。永遠の少年ピーターパンか。
 こんな風に聞いたの、初めてだった。なんだか新鮮。

 まぁ、なんにしても、主催イベントだそうだから、がんばって欲しい。

「すごいね、主催なんて」

「主催は初めてなんだけどね。2マンはたまにやってるけど。ワンマンはよくやるし」

 複数のアーティストが出演するとタイバンと呼ばれるけど、一体何個のバンドが入るとタイバンとなるんだろう。3組はスリーマンだから、4組からなのかな……まぁどうでも良いか。
 でも、ワンマンを何度もやってるって、結構人気あるんだなぁ。

 グラスが空いたからなにか別なものを頼もうかなと思っていると、青司が「そうだ」と何事か思い出した様子で呟いた。

「当日、お迎えはできないんだけど、大丈夫? 場所分かる? ライブハウスの」

 なにを言い出すのかと思ったら……。お迎えって、子供じゃないんだから。

「大丈夫だよ。ここは入ったこと無いけど、場所は調べれば分かるし……外にお客さん居たりするでしょ。たぶん分かるよ」

「そっか」

 安心した様に、青司はグラスに手を伸ばす。
 ライブか。まさか呼んでくれるなんてね。なんで誘ってくれるの、そんなの意味の無い面倒な質問だから、しない。

「たくさん入ると良いね」

「そうだなぁ」

 手売りしているなら、自分のところの売上枚数は把握してるはず。たくさん入ると良いな。素直にそう思う。

「バンドかぁ」

「なんだよ」

「なんでもないよ」

 追加オーダーのビールが届いて、あたしはそれを顔の近くに持っていく。

「じゃあ今日は前祝いだね。イベント成功するように」

 イベントが終わったら、少し豪華なお祝いをしよう。青司は照れ臭そうに笑って、半分減った自分のグラスを持ち上げた。

「華さん」

「なに」

 お酒が入って上機嫌、そんな青司は、今日も綺麗な顔をしてた。ひと呼吸置いてから、口を開く。


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