て・そ・ら
美術部がある校舎の一番上の教室からは、それはそれは結構な景色が望めるのだ。今は夕日がそれほどあたらない中庭を見下ろして、あたしは喉を鳴らしてお茶を飲んだ。
――――――――あ。
思わず、声が出そうになってしまった。
・・・見つけた、横内。
コの字になった校舎の中庭、半分を使ったテニスコートの中で、男子硬式テニス部が練習をしていた。壁に向かってラケットを持ち、独特のフォームで素振りを繰り返している。
今までは気にもならなかったいつもの風景だ。
大体スポーツがあたしは苦手で、それを暑い日も寒い日も外で痛い思いをしてやるってことに魅力を感じない。
だからいつもは全く気にならなかった。
彼らは、視界の中でちょろちょろと動く人間の集団でしかなかった。ああ、運動部か~、お疲れ様、そんな程度の感想をもつかもたないか程度の光景。
なのに。
見つけてしまったではないか!横内を、真っ直ぐに。
声を出しながら列に並んでラケットをもち、一心不乱に素振りをしている。その整列した同じような黒い頭の中で、すぐに横内を見付けてしまうとは!
「・・・おう」
あたしは蓋をしめたペットボトルで自分の頭を叩いた。