て・そ・ら
それからサンキュ、と短くお礼を言ってノートをあけ、今日やるのだろう問題集に猛然と答えを書き写しだす。
結構な速さだった。
・・・おお、真剣になれば、それだけのスピードでシャーペンを動かすのか。あたしはつい観察してしまってそんなことを思う。
早いわ、って。
5分やそこらで、彼はあたしが1時間はかけてした予習を全部うつし終わった。それでもまだ休み時間が余ってるくらいの早さだった。
「わお」
あたしは小さな声で感想を漏らす。それはしっかり横内に聞こえたようで、彼はちょっと笑ってあたしにノートを返してきた。
「マジで助かった。ありがと」
「あ、いえいえ。昨日物理で助けてもらったし・・・。てか、横内君でも貝原先生は怖いんだ?」
あたしの言葉に彼はあはははと声を出す。
「だってあれはキツイだろ。出来なかったら恐怖の朝学習だし。俺今クラブがハードでそれに出てる余裕もないしさ」
ああ、そうか。あたしは頷いた。
恐怖の朝学習。それは、貝原先生のクラスで予習を忘れたもの、テストで赤点をとったものに課せられる、午前7時半からの数学特訓だ。
あたしも一度出たことがある。あれは、本当に恐怖以外の何者でもなかった!
朝から始発で学校へいき、朝学習に参加する生徒は視聴覚室に集められる。そして、自分が解けなかった問題ばかり100個ほど連なるプリントをバン!と目の前に置かれるのだ。