て・そ・ら


 出した両手に落とされたのは一枚のケースに入った切符だった。

「御守り、勉強の」

 電話を耳にあてながら、横内がにっこり笑った。

 驚いて固まってしまったあたしの耳に、ホームに電車が入ってくる音。早く行けって横内が指差している。

「あっ・・・あの、ありがと!」

 自分でもびっくりするような声を出して、あたしは走り出した。階段をかけおりて電車に滑り込む。

 ちゃんと乗れたあとも、息が上がっていた。だけど有り難いと思った。

 顔が赤いのも大きな鼓動も、それのせいに出来るから。

 手の平の中の“勉強のお守り”、それはクリアケースに入った切符。駅名は学駅だった。

 多分、受験生へのお土産によくある縁起のいい駅名の切符をお守りにする、というのなんだろうな、と思った。学駅って、どこにあるんだろう・・・。おじいちゃんがいるって言ってた西の方なのかな。

 手の中にそれを包み込んで、あたしは窓の外の曇り空を眺める。

 だけど、口元には笑みが浮かんでいた。

 これで恐怖の朝学習も頑張れる、そう思ってちょっと、いや、かなり嬉しかったのだ。


 銀灰色の雲・・・それが何だってんだー!




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