て・そ・ら
毎授業毎授業懲りも飽きもせずに寝まくるので、最初の方は叱ったり怒鳴ったりチョークを投げたりした各授業の先生方も、すっかり諦めモードなのだった。
今時珍しく廊下に出されたり、出席簿で頭をバンバン殴られたりすると一応は起きるのだ。
だけどちょっとつり上がり気味の一重の目を眠そうに開けて、悪気がまったくない笑顔でふにゃっと笑いかけ、あ、すんません、と謝る姿に先生方は怒る気をなくしてしまうらしかった。
よって、彼に引き摺られて他の生徒まで寝てしまわないように、それから彼を起こすために授業が中断しないように、横内の席は廊下側の一番後ろ、と担任が定めてしまった。夏休み前のことだ。
なので、その時隣の席に座っている女子生徒が彼を起こすという役割を負うことになってしまったのだった。まあ自主的に、だけどさ。
姉御肌の女の子など、私に任せてとばかりに世話をやいたし、楽しんでる子もいたかもしれない。
だけどあたしにはそれは苦痛だったので、隣の席が横内の時、あたしは見えないフリをしたのだ。
つまり、無視した。
横内がどれだけ寝ようと、あたしには関係ありませんのスタンスで一度も起こさなかったのだ。
だけど隣で健やかに眠られるその寝息って、とっても気になるものなのだ。
すーすーという、健康的で幸せそうな寝息。腕にしっかりと顔を埋めて少しだけ閉じた片目が見えるって状態で。