て・そ・ら
短縮授業で時間もまだ早く、それぞれにジュースやお菓子をもっていて、気楽にしているところの襲撃だった。折角今は文化祭までに各自が作品をいくつか作ればいいって時期だから、部室でダラダラと放課後を過ごしていたのに。
いきなり戸を開けて、普段はいない顧問が突撃してきて写生をしましょうって言ったのだった。
そりゃあ皆驚くってもんで。
部長の杉田さんが、代表で質問する。
何ですか、せんせー。って。
当然だ。皆全くその気はないのだから。
先生は腰に手をあてて明るい笑顔で言ったのだ。
「文化祭の作品を作るだけじゃ暇でしょ?美術部なんだから、たまには美術部らしいことをしようかなって思って」
途端にアチコチからブーイングが上がる。えー、とか、いやだ~、とか。
すると先生は口をぐっと結んで、仕方ないわね、と呟いてから言った。
「正直に言うとね、この部室を空けて欲しいのよ、数日。1年生の水彩画を仕舞う場所がないって相談を受けてね。だから、あなた達は外へでて写生をしてほしいの。ほら、今くらいなら暑くもなく寒くもないでしょ?」
11月は普通寒いでしょう!!ってやっぱり盛大なブーイングが起きたけど、つべこべ言わない!って顧問命令で決定されてしまったのだった。
それであたし達はそれぞれが鉛筆と紙をもって学校中に散っているというわけ。あたしは太陽が暖かくて空が見えるからって理由で外を選んだら、サッカー部にお目当ての男子がいるらしいヒカリちゃんがついてきたのだ。