女子力高めなはずなのに
その時小学6年生だった私は、食べる物がほとんどなく小さく痩せていて、小学校低学年くらいの体格しかなかった。

そして暴れるお父さんに怯えて、押し入れに隠れて生活していた。

その頃のことを私はあまり覚えていない。

なんだか必死で、毎日とにかく何かを食べて生き延びることしか考えていなかったような気がする。

学校に行けば給食を食べられる。

毎日同じ汚れた服を着ていたから、かなりいじめられたし、先生の扱いも酷かったけど、そんなことよりも食べ物を確保することの方が重要だった。

だから、小学校は食べる目的でしか行っていなかった。

……そう思わないとやり過ごせなかったのかもしれない。

家では基本的に押し入れの中にいて、お父さんが帰ってくるとご機嫌をとって、お父さんがお酒を飲んで暴れそうになると押し入れに戻ってじっと隠れていた。

そして、お父さんが寝るのを待って、缶詰の残りを盗み取るタイミングを見計らっていた。

それでも、こんなお父さんでも、捨てられたら生きていけない。

とにかく耐えなければいけない。

最悪な地獄の6年間。

心を持つことを放棄していた6年間。

そんな小さくて喋らなくて鋭い目をした私を見て、お兄ちゃんはこれはいけない、と思ったらしい。
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