女子力高めなはずなのに
仕事のできる井川さん。
がんばらなくていいと言った井川さん。
私を抱き締めた井川さん……。

走馬灯のように昨日の出来事を思い出した。

……私、ダメダメだあ。

全然井川さんから卒業できていないじゃん。

いやいや、違う……。

井川さんは一緒にいると楽しいタメ口で話せるただの上司。

私はちゃんと現実を見て、前向きに幸せを掴むんだから。

前向き、前向き!


……でも、なんか落ち着かない。

こういう時はコーヒーでも飲んで一息つこう。

コートを着て外に出た。

「!」

自販機まで行こうとしたら、自販機の横で壁に寄りかかってる井川さんが視界に飛び込んできた。

もうっ!

どうして会いたくないのに会っちゃうのよ!

いったん上に戻ろう。

そう思った時、ふと井川さんが煙草を吸っていることに気がついた。

あれ?

井川さん、煙草なんか吸ってたっけ?

壁に寄りかかって、空を見ながら煙を斜め上にふーっとあげている。

ヨレヨレねずみ色のくせになんかカッコイイ……。

でも、煙草は体に良くないよ?

井川さん、遠くを見るような、何も見ていないような目をしてる。

……なんか、落ち込んでる?

仕事で何かあった?
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