女子力高めなはずなのに
昨日はお世話になったし、ちょっと慰めてあげようかな。

もう私、前向きになるって決めたし。

井川さんは、一緒にいると楽しいただの上司なんだし。

上司っていうより友達みたいな存在なわけで。

だから、思い切ってスタスタと井川さんに歩み寄った。

「昨日はありがと」

私が話しかけると井川さんは驚いた顔をして、それから優しい目をした。

「井川さんって、煙草吸うんだね」

「禁煙してたんだけど、ダメだね。意志が弱くて」

そう言いながら、小さな袋に煙草を入れて火を消した。

「何かあったの?」

「んー?ちょっとね……」

「なんかミスでもしちゃった?」

「ま、俺にもいろいろあるんだよ」

「あんなに仕事できるのに?」

井川さんはフッと笑った。

「そう?俺、仕事できる?お前に褒めてもらえるなんて光栄だね」

「だって、井川さんが気がついてくれなかったら、うちの課長、今頃大変だったんだよ?課長は自覚薄いみたいだけど」

「あのくらい、普通気がつくよ」

「へえ?ずいぶん余裕じゃん」

「まあね。俺、仕事できますから」

ニヤッと笑った井川さんを無視して、自販機にお金を入れたところでふと気がついた。
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