女子力高めなはずなのに
駅に向かう暗い路地を白い息を吐きながら早足で歩く。

この角を抜ければもう駅、とほっと安心した所でいきなり乱暴に腕を掴まれた。

「え!?」

驚いて振り返る。

私の腕を掴んでいたのはお父さんだった。

「!」

一気に恐怖で体が固まって、息が止まる。


なんで?

なんで、お父さんがここに?


「さくらー、この間の男はなんだ?ええ?」

お父さん、またすごく酔ってる……。

家に来て追い返されたから、私の会社の近くで待ち伏せしてたの?

怖い。

やめてよ。

「俺にあんな……、ゆるされるとおもってんのか?ああ?」

お父さんはあんまり呂律もまわっていない。

一方私は固まったまま、喉が詰まって声も出せない。

フラフラしながら、お父さんが振り回すように手を上げるのがスローモーションで見えた。

瞬間叩かれるのを覚悟して、歯を食いしばって目をギュウッと閉じる。

……。



何も起こらない?

恐る恐る薄目を開けたら、お父さんの手を後ろ手に押さえている男の人がいるのが見えた。

「娘に手を上げるなんて、あんた最低だな」

「!」
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