女子力高めなはずなのに
……あの日、あのまま車に乗っていたら、私、どうなっていたんだろう。

槇村さんに強引に迫られたら、臆病で押しに弱い私は断れなかったと思う。

そしてすごく傷ついただろう。

あの時、井川さんが助けてくれなかったら……。


私……、いつか井川さんが私の方を見てくれないかな、なんてバカみたい。

井川さんは槇村さんたちのターゲットになった私を正義感から守ってくれてただけ。

そんなの恋愛の対象にもならない。

それなのに私、想いを寄せたりして……。

ホント、一人でバカみたい。

もう、希望も何もない。

頭を手すりに押し付けて下を向いたら、ぽろぽろ涙が落ちた。

「ふぇっ……、んっ、……えっ」

我慢しても小さく嗚咽が漏れてしまう。

目をギュウッと閉じた時、ガシッという音と小さな衝撃があって、ビクッと肩を小さくした。

薄く目を開けたら、誰かが両手で私を囲むように手すりを掴んでいるの見えた。
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