女子力高めなはずなのに
急に嬉しい気持ちに実感がわいてきて、涙が出そうになったから、繋いだ手をギュッて握ったら、やっぱり握り返してきた。

「ずっと俺のそばにいて?……さくら」

「……うん」

うなずいたら、落ちないようにしていた涙が、ぽろっとこぼれた。

「すぐ泣くのな。可愛いからいいけどさ」

そんなこと言って涙を拭くから、また赤くなってしまう。


井川さんは、そんなのいらないよって言ったけど、お見舞いだから、途中の花屋さんで小さな花束を買って持っていった。

お父さんの病室は6人部屋で、ガヤガヤと落ち着きのない部屋だった。

私たちが着いた時にはもうお兄ちゃんは来ていて、お父さんと何かを話していた。

病院の入院着を着て、ベッドにちょこんと座ったお父さんは予想以上に老いて小さくて、驚きとやるせない気持ちが混ざったような感覚に陥った。

「何しに来た」

私に気がついたお父さんは、私を見ないでつぶやいた。

「……お見舞い」

私がぽつりと言って花束を差し出すと、やっぱりこっちを見ないまま、お父さんは花束を受け取った。

「そうか」

「……」

それ以上、話が続かない。

どうしよう。

そういえば、お兄ちゃん、珍しく口を挟んでこないな……。

何も言えずにいたら、後ろから井川さんが囁いてきた。

「言いたいことがあるんだろ?」

「!」

それは、そうだけど。
言いにくいな……。
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